鹿笛に寄って微笑した山女
どんな伝承か
猟夫が金谷(磐城相馬郡金房村大字)の深山に入り、櫓を揚げて暁天に笛を吹き、鹿の来るのを待っていた。ある夜四更に笛を吹くと、前の物蔭に大きな音がした。大鹿が来たかと鉄砲を取り上げると、藪の中から女の頭が出た。その大きさは大笊のようで、乱れた髪が地を曳いていた。猟夫を見て微笑んだ物凄さは譬えようもなく、驚き恐れて密かに櫓を下り、走って家に帰りつくと悶絶した。数日を経てようやく本心に復し、その顛末を語った。老人らは、この者が常に殺生を好むゆえ山神が戒めたのだといい、猟夫はついに殺生をやめた。この辺りでは正月と十月の十七日に山神を祭り、この日に山へ入ると怪異を見るという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
柳田国男編『定本柳田国男集 第4巻』を全822話・伝説(1見出し=1話)単位で収録(緒言・序・名義・解説・和歌・注は除外/内包)。所在地(郡村区・社寺)を付して集成。