一言一両の話と一本杉の雷
どんな伝承か
ある男が町へ出ると、見慣れた店先に話売りの看板が出ていた。入ってみると年寄りが一人座っていて、話は一つ一両だという。男が懐の一両を払うと、爺は大木の下より小木の下とだけ言って黙ってしまった。長い語り物を期待していた男は拍子抜けして帰途についた。広い野原を通るころ、にわかに夕立が来て激しい雷が鳴り、男は野中の一本杉の下に駆け込んだ。ふと爺の言葉を思い出して一歩離れたとたん、杉に雷が落ちて木は粉々に砕けた。男は吹き飛ばされたが命は助かり、一両で命を買ったのなら安いものだと語ったという。
原典より
すると、爺様は、大木の下より小木の下に、とたった一言話した。—— 佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。