小糠の跡と合図の紐に振り回される婿
どんな伝承か
新婚の馬鹿婿と嫁が嫁の実家に招かれたが、嫁は婿と連れ立つのを恥ずかしがり、道々に小糠をこぼして行くから跡をたどって来いと言って先に出た。ところが風で小糠が堰や小川に散ったので、婿は律儀にその跡を追って踏み込み、紋付も袴も泥まみれで着いた。嫁は叱って着物を洗ってやり、宴では婿に紐を結んで、引く回数で汁、飯、肴と食べる順を知らせた。婿がそつなく食べるので客たちは感心したが、嫁が厠に立つ間に紐を柱に結んでおいたところ、猫が絡まって紐を引きまくり、婿は汁も飯も肴も一度に口へかき込んで正体を現したという。
原典より
そこで馬鹿智殿はあとから家を出て、小糠のこぼれてゐるとほりに歩いて行くと、途中で風が吹いて小糠が水の乾れた堰や小川へ飛び散らけて居た。—— 佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。