自分の尻を押さえた馬鹿息子
どんな伝承か
ある所に、少し知恵の足りない息子がいた。母親が飴をこしらえて厩の桁の上にしまっておくと、息子がなめたいとせがむので、父親はしかたなく桁へ上った。今から甕を下ろすから、下で尻を押さえていろと言いつけ、しっかり押さえろ、手を離すぞと念を押して、そろそろと下ろした。息子がちゃんと押さえていると答えたので父が手を離すと、甕は土間に落ちて粉々に砕け、飴はみな土に流れてしまった。怒って下りてきた父がなぜ押さえなかったと怒鳴ると、息子は腰をかがめ、両手で自分の尻をしっかり押さえて、こんなに押さえていたと言ったという。
原典より
下で息子は、あへいっよ、しつかりおさえて居るから、と言ふ返事なので、父親が手を離すと、飴甕はどさツと土間へ落ちて粉微塵に砕けて、飴はみんな土の上に流れてしまった。—— 佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。