御堂を直して得た若木の箒
どんな伝承か
ある所に兄弟が三人あった。父親は三人に百両ずつと蔵を一つずつ与え、三年の間に最も価値のある物を蔵に入れた者に家を継がせると言い渡した。総領は当てもなく歩き、黒川という所の観音堂と館という所の権現堂の破れた屋根を村人を頼んで葺き替え、さらに北上川に長い橋を架けて百両を使い果たした。参詣人が増えたのを喜んで観音堂に泊まると、夢に観音が現れて釣竿を与え、最初に釣った物を必ず大事にせよと告げた。翌夜は権現堂で尽きぬ御酒錫と若木の箒を授かった。橋の上から釣ると小汚い小袋が上がり、振ると黄金小判が限りなく出た。総領は蔵を黄金で満たして跡継ぎに定まった。
原典より
父親は三人の兄弟にお金を百両づつと倉を一つ宛建てゝ與へて、さてこれからお前たちに三年の暇を遣るから、誰でもこの蔵に一番価値のある物を入れた子に此の家の後継者を委せる。—— 佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。