板ヶ沢から淵の主に嫁いだ娘
どんな伝承か
上閉伊郡釜石町板ヶ沢のある家に、容貌の美しい一人娘がいた。この家の嫁であったともいう。ある日、養蚕の桑の葉を摘みに裏の畠へ行ったが、桑の木の下に草履を脱いだまま行方不明になった。家人が嘆いていると、旅の六部が来かかって言うには、この娘は生まれながらに水性の物の主のもとへ嫁ぐ宿因の者で、今その時期が来たのである。これから北方三十里ほど隔たった閉伊川のハラタイという淵の主のもとへ行っている、命に別状はなく、今は閉伊川流域の女王となっているから安心せよという。板ヶ沢家の氏神大天馬の前夜祭の晩には必ず娘が戻り、玄関の草履は濡れ水は濁っていたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。