河童に見込まれた豪家の一人娘
どんな伝承か
遠野の在の新張という部落に豪家があり、一人娘がいた。夏のある日、暑いので裸になって裏の流れに身を浸していたところ、河童に見込まれてしまった。娘はそれが人間の男ではないと思っても声が立てられず、恐ろしさに身も凍るばかりであった。産む時は非常な難産で、大きな半桶の上に簀子を敷き渡し、その上に乗って生んだのは、異様な頭部に大口のある奇形児であった。それを鉈で寸々に切り砕いて棄てたが、川端の石の上に置くや否や、目には見えぬ何物かが持ち去って無かったという。その後も女は再び河童の子を孕み、夜半に魔性の物が忍んで来て、ついに痩せ細って死んだ。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。