ある晩、風もないのに家が吹き飛ぶような音と地響きがし
どんな伝承か
天狗はその無双の力ゆえに、時には人々から恐れられていたようである。同じ直弥にはこんな話も伝えられている。前に述べた「子は清水」の家は、背戸の山が昼なお暗く大木を繁らせていたが、その中に差し渡し三尺にも余る樫の大木があった。ある晩、風もないのに突然、巽の方から家も吹き飛ぶかと思われる音がバサバサとし、やがて天地も砕け去るかと思われるほどの地響きとともにメリメリという音がして、カンラカラカラという笑いとともにその騒ぎは静まった。翌朝、おそるおそる起き出て見ると、さしもの樫の木も見事にへし折られていたので、村人たちは天狗のなせる業と恐れおののいたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐倉市史 民俗編――伝説・怪異(佐倉市(編)・佐倉市史・自治体史(民俗))
『佐倉市史 民俗編』第八章口承文芸所収の伝説・怪異。千葉県佐倉市に伝わる口承を採録する。