天狗を斬ったはずが割れていた一刀石
どんな伝承か
柳生町の天之石立神社の近くに、十畳敷ほどの大岩が真ん中からまっ二つに裂けて横たわっている。伝えによれば、柳生宗厳は夜ごとこの谷へ通い、天狗を相手に剣の試合を重ねていた。ある夜、ついに天狗を一太刀で斬り伏せたと思って目を凝らすと、斬れていたのは天狗ではなく岩のほうで、見事に二つに割れていたという。以来、里の人々はこの岩を一刀石と呼ぶようになった。岩には今も、天狗の足跡と呼ばれるくぼみが残されているという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
奈良市史 民俗編――伝説(奈良市(編)・奈良市史)
『奈良市史 民俗編――伝説』は、自治体史『奈良市史』民俗編のうち、第十一章「伝説」と巻末の「民俗資料」の冒頭を収めたものである。昭和三十七年から三か年にわたり市内各町の自治会長や古老、社寺を訪ねて集めた伝説に文献の伝えを加え、春日大社・東大寺・興福寺などの社寺や、吉備真備・俊寛・中将姫らゆかりの人物にまつわる話を収める。木・石・塚・水・山・森・社寺・人物・動植物・町名の十節に分け、一話ごとに題を立てて記す。