采女の入水で猿沢池を去った竜
どんな伝承か
猿沢池には昔、竜が棲んでいたという。ところが采女がこの池に身を投げたため、竜は春日山へ住まいを移した。だがそこへも亡骸を捨てに来る者があったので、さらに宇陀郡の室生川の上流へと去っていった。今、竜穴と呼ばれる所がその跡で、近くには竜をまつる竜穴神社があるという。春日山にはいまも雨乞いの神として鳴雷神社が鎮まり、日照りが続くと周りの農民が雨を祈りに参っている。また下須川町の戸隠神社の北にも、竜が棲んだと伝える小さな池があり、その水はいつも緑色をしているという。
原典より
ところが釆女がこの池に入水したので、春日山に移ったが、ここへも死骸を捨てに来るようになったので、さらに宇陀郡室生川の上流に棲むようになった。—— 奈良市史 民俗編――伝説(奈良市(編)・奈良市史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
奈良市史 民俗編――伝説(奈良市(編)・奈良市史)
『奈良市史 民俗編――伝説』は、自治体史『奈良市史』民俗編のうち、第十一章「伝説」と巻末の「民俗資料」の冒頭を収めたものである。昭和三十七年から三か年にわたり市内各町の自治会長や古老、社寺を訪ねて集めた伝説に文献の伝えを加え、春日大社・東大寺・興福寺などの社寺や、吉備真備・俊寛・中将姫らゆかりの人物にまつわる話を収める。木・石・塚・水・山・森・社寺・人物・動植物・町名の十節に分け、一話ごとに題を立てて記す。