雷を追って顔が八つに映った八雷神
どんな伝承か
昔、東大寺に雷が落ちたことがあった。僧がこの雷を捕らえようと後を追いかけたが、とうとう姿を見失ってしまい、その場所が今の不審ヶ辻子町だという。追っていた僧がふと水鏡に自分の姿を映してみると、顔が八つに分かれて映っていた。僧はその異様な姿をそのまま面に彫り上げ、これが八雷神の面であると伝えられる。直前の条によれば、元興寺には忿怒の形相をした恐ろしい面が残っており、持ち出すと不吉なことが起こるといわれている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
奈良市史 民俗編――伝説(奈良市(編)・奈良市史)
『奈良市史 民俗編――伝説』は、自治体史『奈良市史』民俗編のうち、第十一章「伝説」と巻末の「民俗資料」の冒頭を収めたものである。昭和三十七年から三か年にわたり市内各町の自治会長や古老、社寺を訪ねて集めた伝説に文献の伝えを加え、春日大社・東大寺・興福寺などの社寺や、吉備真備・俊寛・中将姫らゆかりの人物にまつわる話を収める。木・石・塚・水・山・森・社寺・人物・動植物・町名の十節に分け、一話ごとに題を立てて記す。