傘と宝珠を取り替えた狐の親分
どんな伝承か
上手岡のむぐろ畑に金平六という狐の親分がいた。雨の夜、下千里の医者が往診の帰りにむぐろ畑を通ると金平六が現れ、女や一つ目小僧に化けて医者を化かそうとしたが、太い尾を隠せなかった。医者が蛇の目傘を回して姿を隠すと狐は感服し、化けるのに要る宝珠の玉と傘を取り替えた。のちに妻狐が難産になったとき、玉を失った金平六は仲間から玉を借りて医者を呼び、礼に毎朝山芋や雉を医者の台所へ置いたという。金平六は化けくらべの名人でもあり、仙台の竹駒様の狐に試合を申し込んだが、来たのは本物の大名行列で、侍に咎められて逃げ帰ったとも伝える。
原典より
その1 むかし、上手岡下千里に住む或る医者が、雨のしとしとと降る春の夜、往診の帰途、下千里のむぐろ畑を歩いていた。—— 富岡町史 第3巻(考古・民俗編)――昔話と伝説(富岡町(編)・富岡町史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
富岡町史 第3巻(考古・民俗編)――昔話と伝説(富岡町(編)・富岡町史)
『富岡町史 第3巻(考古・民俗編)――昔話と伝説』は、福島県富岡町の町史のうち考古・民俗を扱う巻で、ここにはその第九章「昔話と伝説」が収められている。昔話の節は昭和五十八年五月の福島県教育委員会による文化財基礎調査のまとめに町の既刊の話集から数編を加えたもので、麓山の白蛇や、大原の大吉・金平六など名のある狐の話が目立つ。伝説の節には朝賀城哀話、仏浜、戊辰戦争、鉱山、北風薬師などを収め、各話に伝承者の地区と名を添える。