熔鉱炉を咎めたお滝様の長雨
どんな伝承か
昔、上手岡の大木戸川原に熔鉱炉があった。何年頃造られたものか、誰が経営していたのかは分からずじまいである。この経営者はなかなか強硬な人で、滝川にもう一つ熔鉱炉を造る計画を立てた。それを知った滝川江下の農民はこぞって反対した。炉を造ればきっとお滝様のおとがめがあるに違いないと思ったからである。しかし経営者は反対を押し切って炉を造ってしまい、そのためか毎日のように雨が降り続いた。農家の人々はこれはお滝様のおとがめに違いないと大騒ぎになり、日を決めて滝川へ押しかけ炉を打ち壊した。帰り道に大木戸川原の経営者と出会い、俺のところは壊せまいと言われて激昂し、引き返して大木戸の炉も打ち壊したという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
富岡町史 第3巻(考古・民俗編)――昔話と伝説(富岡町(編)・富岡町史)
『富岡町史 第3巻(考古・民俗編)――昔話と伝説』は、福島県富岡町の町史のうち考古・民俗を扱う巻で、ここにはその第九章「昔話と伝説」が収められている。昔話の節は昭和五十八年五月の福島県教育委員会による文化財基礎調査のまとめに町の既刊の話集から数編を加えたもので、麓山の白蛇や、大原の大吉・金平六など名のある狐の話が目立つ。伝説の節には朝賀城哀話、仏浜、戊辰戦争、鉱山、北風薬師などを収め、各話に伝承者の地区と名を添える。