柳原土手の光り物と土蔵の反射
どんな伝承か
文化六年の夏、柳原の土手に夜な夜な光り物が出るという噂が広まった。前の年の夏から秋にかけて、神田紺屋町の嘉兵衛の子で十四になる少年が、風雨の中を通りかかり、立てかけてあった材木の倒れるのに驚いて命を落としていた。その執心が陰火となって燃えているのだと言われ、近所の者は夜中に見物へ出かけた。ところが調べてみると、同じ町の髪結市兵衛が持つ二間四方の土蔵に、通行人の提灯の光が映っていただけだった。修復の足場に筵を張ると、噂はぴたりとやんだ。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
科学的教養(小泉丹・小泉丹・科学論・1948年(昭和23年))
『科学的教養』は、小泉丹が昭和二十三年に春秋社から刊行した、科学的なものの見方を説く評論である。精確さ・合理性・実証の面から科学的と非科学的の違いを論じ、河童の記録や呪いの効き目、『耳袋』の怪異談、狐憑き、幽霊・化物屋敷、人魂・鬼火・怪火を例に、日本人のものの考え方を検討する。昭和十七年に書いた前版を戦後に改稿したもので、序と起序に続く七章から成り、旧稿の終わりの二章を除いたと序に記す。