和尚に叱られ自ら死んだ瑞龍寺の狐
どんな伝承か
狐には狸と違って義理を知る心があると著者は言い、先に触れた備後三次の寺の飢えた狐たちの例に加えて次の話を挙げる。静岡の西の端にあった瑞龍寺で、文化四年四月十八日の早朝、境内に棲む狐が寺の鶏をくわえて逃げようとし、寺男が取り返した。住職は本堂前の広庭から山に向かい、お前たちは長年この寺の山に住んで食べ物をもらう家畜同然の身で、鶏とは仲間ではないか、こんな不道理をするなら山の狐を残らず追い出すぞと大声で叱った。二日後、鶏をくわえたあの狐が墓地で傷一つなく安らかに死んでいた。和尚が手厚く葬ると、その夜数匹の狐が座敷の庭に来て鳴いて去った。
原典より
スルと其夜數匹の狐が、寺の坐敷の庭へ来て、銘々に數聲づ、啼き立て、去ったのは、和尙に謝詞を述べるのであらうと想像されたと云ふ。—— 動物界霊異誌(岡田建文・岡田建文・心霊研究・1927年(昭和2年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物界霊異誌(岡田建文・岡田建文・心霊研究・1927年(昭和2年))
『動物界霊異誌』は、岡田建文(蒼溟)が昭和二年に著し、郷土研究社から出した動物怪異の記録集である。二十余年にわたって集めた体験や同志の報告から、動物にまつわる怪異の事例を選び、山陰地方を中心とする明治・大正の見聞と、近世の随筆に見える記事を収める。蝦蟇・猫・河童・狐・狸と貉・外道(人狐)・蛇などの動物ごとに、解説・事例・古人の記述の順に並べ、心霊の立場からの考察を加える。