冬山に入りカシャンボとなる河童
どんな伝承か
紀州熊野のあたりでは、河童は冬になると山に入り、カシャンボという怪物になると伝える。南方熊楠の報告によれば、カシャンボは六七歳の子どもの姿で頭は芥子坊主、青い衣を着ていて愛らしいが、たいへんな悪さ好きである。東牟婁郡高田村の旧家のうちの一軒には、毎年秋になると河童が新宮川を上って挨拶に来る。姿は見えないが、一匹着くごとに小石を一つ投げ込んで到着を知らせ、それから山林に入ってカシャンボになるという。牛馬に害をなすことが多く、夜に水辺から出て牛小屋を襲い、涎のようなものを牛に塗りつけて苦しめる。戸口に灰をまいておくと、水鳥のような足跡が一面に残るという。
原典より
柳田國男氏の『山島民譚集』に南方熊楠氏の報告が載せてあるが其によると、カシャンボは六七歳の小兒の形で頭は芥子坊主、青衣、姿は愛らしいが、中々の惡事好きである。—— 動物界霊異誌(岡田建文・岡田建文・心霊研究・1927年(昭和2年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物界霊異誌(岡田建文・岡田建文・心霊研究・1927年(昭和2年))
『動物界霊異誌』は、岡田建文(蒼溟)が昭和二年に著し、郷土研究社から出した動物怪異の記録集である。二十余年にわたって集めた体験や同志の報告から、動物にまつわる怪異の事例を選び、山陰地方を中心とする明治・大正の見聞と、近世の随筆に見える記事を収める。蝦蟇・猫・河童・狐・狸と貉・外道(人狐)・蛇などの動物ごとに、解説・事例・古人の記述の順に並べ、心霊の立場からの考察を加える。