駿府城の姥狐の手拭舞
どんな伝承か
昔、駿府の城に「うば狐」と呼ばれる狐がいた。人が手拭を与えると、それをかぶって舞ったが、声がするばかりで姿は見えず、ただ手拭だけが宙に浮かんでくるくると回り、舞うようなさまを見せたので、人々は面白がった。手拭を渡すときには、受け取る姿は見えないのに、持っている手を何かがこすって通るように感じられ、そのまま持っていかれてしまう。若い者がわざと渡すまいとして固く握っていても、取られなかったためしはなかったという。
原典より
昔、駿府の御城に、うば狐と言停へし狐あり、人是に手巾を奥ふれば夫を被ぶりて舞ひしが、聲ばかりして形は見えず、た 手巾空に額轉して廻舞のやうを見せしほどに、人々興に入りけり、…—— 動物界霊異誌(岡田建文・岡田建文・心霊研究・1927年(昭和2年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物界霊異誌(岡田建文・岡田建文・心霊研究・1927年(昭和2年))
『動物界霊異誌』は、岡田建文(蒼溟)が昭和二年に著し、郷土研究社から出した動物怪異の記録集である。二十余年にわたって集めた体験や同志の報告から、動物にまつわる怪異の事例を選び、山陰地方を中心とする明治・大正の見聞と、近世の随筆に見える記事を収める。蝦蟇・猫・河童・狐・狸と貉・外道(人狐)・蛇などの動物ごとに、解説・事例・古人の記述の順に並べ、心霊の立場からの考察を加える。