里芋を欲しがった外道竹松
どんな伝承か
石見の大田町の警察署南隣にある岩谷牛市という大工の家に、竹松と自称する有名な外道が居ついており、牛市の女房お茂と深い因縁があるものと見なされていた。ある日、その地方第一の金満家である常村の下女が川で里芋を洗っているところへ、お茂が通りかかり、うまそうな里芋だことよと愛嬌を言って行き過ぎた。やがて下女が主家へ帰ると、内儀の眼の色が変わり、妙なことを口走り始めて様子が怪しくなった。皆が心配していると、内儀が今日の里芋を分けてくれぬかと言う。下女たちを調べて先刻のお茂のことが知れ、直ちに里芋を持たせてやったところ、たちまち内儀は常態に復したという。
原典より
やがて右の下女が主家へ歸ると、主人の内儀は眼の色が變り、 なことを口走り始めて、容子が怪しくなったので皆が心配をして居ると、其中に『今日の里芋を分けてくれぬかい』と言つた。—— 動物界霊異誌(岡田建文・岡田建文・心霊研究・1927年(昭和2年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物界霊異誌(岡田建文・岡田建文・心霊研究・1927年(昭和2年))
『動物界霊異誌』は、岡田建文(蒼溟)が昭和二年に著し、郷土研究社から出した動物怪異の記録集である。二十余年にわたって集めた体験や同志の報告から、動物にまつわる怪異の事例を選び、山陰地方を中心とする明治・大正の見聞と、近世の随筆に見える記事を収める。蝦蟇・猫・河童・狐・狸と貉・外道(人狐)・蛇などの動物ごとに、解説・事例・古人の記述の順に並べ、心霊の立場からの考察を加える。