厳島の神前で表ばかり出た百文銭
どんな伝承か
円了が、政略のために作られた怪異の例として挙げる故事。昔、秀吉が朝鮮に兵を出そうとしたとき、厳島神社の神前に百文銭を投げて勝敗を占った。この戦いでわが軍が大勝するなら銭はすべて表が出ると祈って投げると、はたしてどれも表ばかりが出たので、家来たちは大いに喜んだという。ところが実は、あらかじめ銭を二枚ずつ重ねて糊で貼り合わせ、どう投げても表が出るように細工してあった。種を知らずにひたすら信じれば、まことに不思議な神意として誰も疑わなかっただろうと円了は述べている。
原典より
秀吉は祝して曰く、「もしこの戦いで我が軍が、大勝するなら、百文銭の表面ばかりが出る」と言ったところが、投げた銭は皆表面ばかりが出たので、家来一同、大いに喜んだという。—— 井上円了 妖怪学講義(井上円了 著・平野威馬雄 編) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
井上円了 妖怪学講義(井上円了 著・平野威馬雄 編)
『井上円了 妖怪学講義』は、明治期に哲学館で講じられた井上円了の『妖怪学講義』から要所を選び、平野威馬雄が現代の文章に改めて編んだ抄録である。狐憑きや化物屋敷、怪火、幽霊、コックリなどを題材に、円了が古書から抜き出した記事、各地から寄せられた報告、円了自身の現地での調べを収める。原著の八部門のうち理学・心理学・宗教学・雑の四部門を章に立て、序で研究の経緯と分類を、結びで編者の見方を述べる。