飯柳の稲荷の先で川に落ちた三人
どんな伝承か
北蒲原郡千唐仁村の者三人が連れ立って、中蒲原郡の新津から帰る途中のことである。同じ郡の飯柳村まで来たころには日が暮れていたので、村の稲荷の社頭でしばらく休んだ。そこから三、四町も歩いたと思うころ、三人は同時にみのぼしに憑かれた。三人ともこのことを知っていたので少しも驚かず、一人がマッチをすって火を点じようとしたが、どうしたわけか火がつかない。手間取るうちに三人とも道端の川の中へ落ちてしまった。浅い川で岸に上がるのはたやすいはずなのに、身体が思うようにならず上がれない。ようやく一人が火を点じたところ、みな正気に復したという。
原典より
三四町も歩みしと思ふ頃、三人同時にみのぼしにつかれたり、—— 井上円了 妖怪学講義(井上円了 著・平野威馬雄 編) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
井上円了 妖怪学講義(井上円了 著・平野威馬雄 編)
『井上円了 妖怪学講義』は、明治期に哲学館で講じられた井上円了の『妖怪学講義』から要所を選び、平野威馬雄が現代の文章に改めて編んだ抄録である。狐憑きや化物屋敷、怪火、幽霊、コックリなどを題材に、円了が古書から抜き出した記事、各地から寄せられた報告、円了自身の現地での調べを収める。原著の八部門のうち理学・心理学・宗教学・雑の四部門を章に立て、序で研究の経緯と分類を、結びで編者の見方を述べる。