二十一夜続いた屋根からの投石
どんな伝承か
明治二十三年十二月十八日の夜、栃木県栃木町の大塚某の屋根から、突然石を投げる者があった。調べても人影はなく、夜が明けると止み、これが二十一日間も毎晩続いた。石の落ち方は人の仕業とは思えず、上から降るのではなく、わざわざ運んできて置くように、あるいは転がすように落ちてきた。木戸を叩く声に驚いて出てみると大きな石が降ってきて何の姿もなかったという。隣家の裏にむじなの大きな穴があり、実際にむじなを見た者も二人いたことから、僧に祈祷を頼んだところ、五十余年を経たむじなの仕業だとわかったと伝わる。
原典より
その投げ方は、どう考えても人の投げるのと異なって、上から降下するのではなく、わざわざ持って来て下に置き、あるいは、カラカラところがすように落ちてくる。—— 井上円了 妖怪学講義(井上円了 著・平野威馬雄 編) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
井上円了 妖怪学講義(井上円了 著・平野威馬雄 編)
『井上円了 妖怪学講義』は、明治期に哲学館で講じられた井上円了の『妖怪学講義』から要所を選び、平野威馬雄が現代の文章に改めて編んだ抄録である。狐憑きや化物屋敷、怪火、幽霊、コックリなどを題材に、円了が古書から抜き出した記事、各地から寄せられた報告、円了自身の現地での調べを収める。原著の八部門のうち理学・心理学・宗教学・雑の四部門を章に立て、序で研究の経緯と分類を、結びで編者の見方を述べる。