裏門から出て正面から帰る稲荷のお旅
どんな伝承か
神が神社から旅所へ出かけるお旅の神事は、本祭りの前日か一週間ほど前に行われるのが普通である。京都の稲荷神社ではこれが大祭より一か月も前に行われるが、それはかえってごくまれな例とされる。この稲荷のお旅では、旅所へ渡るときには神輿が裏門から出ていくのに、帰り、つまり例大祭の前日のお渡りのときには、本通りの正面から堂々と入ってくる。筆者はこれを、お旅がもともと神社へ神を迎え入れる渡御の行事から起こったことを示す例としている。
原典より
すなわち、さきの稲荷神社の行事を見ても、旅所に渡る時は裏門から神輿が出て行くのに、帰り、すなわち例大祭の前日のお渡りは堂々と本通りの正面からはいってくることになっている。—— 日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗(原田敏明・池上廣正・堀一郎ほか) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗(原田敏明・池上廣正・堀一郎ほか)
『日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗』は、原田敏明・池上廣正・堀一郎ら十二人の執筆者による論文集である。民間に伝わる神と霊の観念、家や村の氏神、職業の神、祭りの日取りと組織、憑きものや妖怪を題材に、各地の調査報告や古記録に見える事例を引いて論じる。原田の総説に始まる十七編からなり、後半では修験道・庚申信仰・キリシタン・新興宗教と民間信仰とのかかわりを扱う。