理髪業の祖を祭る西信寺の采女講
どんな伝承か
近世の床屋は一銭剃りと呼ばれた。その始祖は禁裏の北面の武士だった藤原采女正晴基で、事情あって西国へ下り、身分を隠して民間で一銭剃りを始めたと伝わる。同業者はこの人物を神として祝い、講を結んで祭ってきた。文京区大塚上町の西信寺には、その祖を葬ったという墓がある。墓石には理髪業の祖として北小路采女助累世の名が刻まれ、台石には采女講の三字が見える。職業ごとに守護神を立て、同業の者が講を組んで祭る習わしを示す一例である。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗(原田敏明・池上廣正・堀一郎ほか)
『日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗』は、原田敏明・池上廣正・堀一郎ら十二人の執筆者による論文集である。民間に伝わる神と霊の観念、家や村の氏神、職業の神、祭りの日取りと組織、憑きものや妖怪を題材に、各地の調査報告や古記録に見える事例を引いて論じる。原田の総説に始まる十七編からなり、後半では修験道・庚申信仰・キリシタン・新興宗教と民間信仰とのかかわりを扱う。