社司ひとりが村の吉凶を見る戸たて祭り
どんな伝承か
備中阿哲郡上唐松の甲籠神社は甲を神体とし、旧暦正月の亥の日に戸たて祭り、またはかいこもり祭りと呼ぶ神事が行われた。当日は村じゅうの者が家に籠り、食事も前日のうちに用意して戸を閉ざし、外に出なかった。社司ただ一人が山上の社に登って祭りを行い、社のそばの滝と呼ばれる所から村を見渡して、家々に吉凶があるかどうかを見届けた。祭りが済むと庄屋の家に村人を集め、それぞれの吉凶を言い渡したという。著者は、社司一人に神秘な力のすべてを委ねた例だと述べている。
原典より
当日は一村残らず引きこもり、食事なども前日のうちに用意しておき、戸を閉ざして出ず、社司一人だけが、山上の社に登って祭りを行ない、社の傍の滝と称する所から村中を望み見て、人家に吉凶のあるなしを見とどけ、…—— 日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗(原田敏明・池上廣正・堀一郎ほか) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗(原田敏明・池上廣正・堀一郎ほか)
『日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗』は、原田敏明・池上廣正・堀一郎ら十二人の執筆者による論文集である。民間に伝わる神と霊の観念、家や村の氏神、職業の神、祭りの日取りと組織、憑きものや妖怪を題材に、各地の調査報告や古記録に見える事例を引いて論じる。原田の総説に始まる十七編からなり、後半では修験道・庚申信仰・キリシタン・新興宗教と民間信仰とのかかわりを扱う。