鹿の作り物を射る予祝と藁の鰹釣り
どんな伝承か
祭りのなかで生産の営みをまねる例として、原典は山と海の二つを並べる。山あいの三河北設楽郡の村々では、鹿をかたどった作り物を弓で射て、その年の実りをあらかじめ祝う。海辺の三重県北牟婁郡長島町では六月十五日の祭りに、あざやかに彩った船ダンジリに若者が乗り込み、動くダンジリの上から藁で作った鰹を竿で釣り上げるしぐさを何度もくり返した。釣り上げた鰹は胸でうまく受け止めなければならず、出る者は本物の鰹釣りの稽古も兼ねて、かなり練習を積む必要があったという。
原典より
山間部の例として三河北設楽郡の村々で、鹿の形の作り物を射て年のはじめの予祝とするといえば、海辺の三重県北牟婁郡長島町の六月一五日の祭りは、極彩色の船ダンジリに若い者が乗って、…—— 日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗(原田敏明・池上廣正・堀一郎ほか) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗(原田敏明・池上廣正・堀一郎ほか)
『日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗』は、原田敏明・池上廣正・堀一郎ら十二人の執筆者による論文集である。民間に伝わる神と霊の観念、家や村の氏神、職業の神、祭りの日取りと組織、憑きものや妖怪を題材に、各地の調査報告や古記録に見える事例を引いて論じる。原田の総説に始まる十七編からなり、後半では修験道・庚申信仰・キリシタン・新興宗教と民間信仰とのかかわりを扱う。