枕の上を馬で渡る五寸の小鬼
どんな伝承か
ある人が方違えのために、下京あたりの家へ幼い子を連れて泊まった。その家にはもとから霊がいたが、誰もそれを知らなかった。子の枕元に灯を近くともし、そばに二三人が付き添っていた夜半、乳母が目を覚まして見ると、塗籠の戸が細く開き、そこから身の丈五寸ほどの男たちが装束を着けて馬に乗り、十人ばかり続いて子の枕の上を渡って行った。乳母は恐ろしく思いながらも打蒔の米をつかんで投げつけると、渡る者たちはさっと散って消えた。夜が明けて枕元を見ると、投げた米の一粒ごとに血がついていたという。
原典より
その夜乳母が目をさますと長さ五寸ばかりの男鬼が馬に乗って十人許り枕許にあらはれたので打蒔の米をつかんで投げると散りうせたが、その米に血がにじんでゐた。—— 動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・1926年(大正15年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・1926年(大正15年))
『動物妖怪譚』は、日野巌が大正六年に筆を起こし、大正十一年の跋と大正十五年の再記を添えて著した伝説の動物の研究書である。鬼・天狗・河童・人魚・雪女・龍・雷獣・狐・狸・獏・鯰・猫など二十六の項目を立て、記紀や万葉集から近世の随筆までの記事を原文の引用ごと示して起源と変遷をたどり、動物学の知識で正体を考える。總論で起原・歴史的変遷・分類などを論じ、結論では迷信から科学へ近づくことを説いて閉じる。