海の唱える法文を追って横川に至る天狗
どんな伝承か
今昔物語の話。昔、天竺の天狗が震旦へ渡ろうとすると、海の水がひとすじに諸行無常の偈を唱えていた。尊い法文を海が唱えるのを怪しんだ天狗は、その音をたどって震旦を過ぎ、日本の海でも同じ声を聞いた。筑紫の津、門司の関、河尻、淀川、宇治川を経て近江の湖へ入るほど声は高くなり、ついに比叡山の横川から流れ出る川にたどり着くと、川がその文をはっきり唱えていた。見ると四天王と護法の神々がその水を守っており、天狗は恐れて近寄れなかったという。
原典より
河の水の上を見れば、四天王及び諸の護法此の水を護り給ふ。—— 動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・1926年(大正15年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・1926年(大正15年))
『動物妖怪譚』は、日野巌が大正六年に筆を起こし、大正十一年の跋と大正十五年の再記を添えて著した伝説の動物の研究書である。鬼・天狗・河童・人魚・雪女・龍・雷獣・狐・狸・獏・鯰・猫など二十六の項目を立て、記紀や万葉集から近世の随筆までの記事を原文の引用ごと示して起源と変遷をたどり、動物学の知識で正体を考える。總論で起原・歴史的変遷・分類などを論じ、結論では迷信から科学へ近づくことを説いて閉じる。