雲景が見た金の鳶と魔王の評定
どんな伝承か
太平記の雲景の話。雲景は恐れながら広廂にうずくまっていた。座敷には御座が二畳敷かれ、大きな金色の鳶が翼をつくろって座っている。右には身の丈八尺ほどの大男が大弓と大矢を横たえて控え、左の上座には日月星辰を織り出した袞竜の御衣に金の笏を持つ人々が並ぶ。案内の山伏に尋ねると、上座の金の鳶は崇徳院、傍らの大男は為義入道の八男為朝、ほかの座は代々の帝王や名だたる高僧たちで、いずれも大魔王となって集まり、天下を乱す評定をしているのだと語ったという。
原典より
雲景、おそろしながらひろびさしにくぐまりゐたるに、御座を二でふ敷きたるに大なる金のこび、つばさをつくろひて著座したり。—— 動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・1926年(大正15年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・1926年(大正15年))
『動物妖怪譚』は、日野巌が大正六年に筆を起こし、大正十一年の跋と大正十五年の再記を添えて著した伝説の動物の研究書である。鬼・天狗・河童・人魚・雪女・龍・雷獣・狐・狸・獏・鯰・猫など二十六の項目を立て、記紀や万葉集から近世の随筆までの記事を原文の引用ごと示して起源と変遷をたどり、動物学の知識で正体を考える。總論で起原・歴史的変遷・分類などを論じ、結論では迷信から科学へ近づくことを説いて閉じる。