仰木の子が天狗に諸国を見せられる
どんな伝承か
善悪因果集の話。近江仰木の里の百姓の子で十五、六歳の少年が比叡山の寺に給仕に出ていたが、天和三年四月、仰木大明神の祭りの日に大師堂のあたりで姿を消した。同じころ里では祭りの最中に少年の伯父の家から火が出て三軒が焼けた。七日後、少年は大師堂のそばにぼんやり立っているところを見つかる。語るには、大山伏に誘われて空を飛び、氏神の森の梢の座敷から祭りを見た。寒いので火にあたりたいと答えると、山伏が団扇をあおいで火が燃え、それは伯父の家だと告げられた。さらに坂本の山王祭や日光の祭りでも団扇で喧嘩を起こさせ、諸国を巡ったという。
原典より
其れより坂本へつれゆきて山王權現の祭を見るに喧嘩させて見せんずるぞこて、例の團扇にて招かれければ、大に諍論出來て、人皆騒ぎ動く。—— 動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・1926年(大正15年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・1926年(大正15年))
『動物妖怪譚』は、日野巌が大正六年に筆を起こし、大正十一年の跋と大正十五年の再記を添えて著した伝説の動物の研究書である。鬼・天狗・河童・人魚・雪女・龍・雷獣・狐・狸・獏・鯰・猫など二十六の項目を立て、記紀や万葉集から近世の随筆までの記事を原文の引用ごと示して起源と変遷をたどり、動物学の知識で正体を考える。總論で起原・歴史的変遷・分類などを論じ、結論では迷信から科学へ近づくことを説いて閉じる。