余川村で捕えた両頭の蛇
どんな伝承か
文政十年八月二十日、隣の駅である六日町の在、余川村の農民太左衛門の軒端に両頭の蛇が出たのを捕らえた。長さは一尺に足らず、その頭が二つ並んで枝のようになっているだけで、色も形も常の蛇と変わらなかった。あるにまかせて古い箱に入れ、餌も入れておいたが、一日二日三日と過ぎるうちに、いつのまにか逃げてしまったらしく、あたりを尋ねたが見つからなかったという。『北越雪譜』が記す一条である。
原典より
文政十年亥の八月廿日隣驛六日町の在余川村の農人太左衛門の軒端に兩頭の蛇いでたるを捕ふ。—— 動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・1926年(大正15年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・1926年(大正15年))
『動物妖怪譚』は、日野巌が大正六年に筆を起こし、大正十一年の跋と大正十五年の再記を添えて著した伝説の動物の研究書である。鬼・天狗・河童・人魚・雪女・龍・雷獣・狐・狸・獏・鯰・猫など二十六の項目を立て、記紀や万葉集から近世の随筆までの記事を原文の引用ごと示して起源と変遷をたどり、動物学の知識で正体を考える。總論で起原・歴史的変遷・分類などを論じ、結論では迷信から科学へ近づくことを説いて閉じる。