狐から奪った玉と痩せた大工
どんな伝承か
江戸本所の亀井戸、名主が持つ地面に住む大工が、夏の夜に涼んでいると狐が一匹あらわれた。狐が手で何かを転がすたび、ぱっと火が燃え立つ。その明かりで地面を照らし、虫を拾って食べているのだった。近づいても狐は気づかず、玉は次第に手元まで転がってくる。すかさずつかむと、狐は驚いて逃げた。手の中には白い玉があり、転がせば火が出るので付け木がいらない。三年ほど秘蔵するうち、狐が一匹昼夜つきまとい、大工はみるみる痩せ衰えた。祟りだと言われ、ある夜わざと玉を投げてやると、狐は躍り寄ってそれをくわえ、姿を消した。以後、大工は何ごともなかったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・大正・昭和初期)
博物学者・日野巌の古典的妖怪研究『動物妖怪譚』の前半(總論〜多爾具久)。