後小松院の夢と獏の宝船
どんな伝承か
正月の宝船の絵に獏の字を添える習わしの古い起こりとして紹介される話。萩原随筆によれば、後小松院が夢に宝船を見たので、それを絵に描かせ、自ら獏の字を書き添えたうえ、黄金の釜の煤を集めて版木で摺らせたという。著者は、文晁書談に見える大永のころの記録よりさらに古く、これが本当なら今から五百年あまり前にさかのぼると述べる。こうした獏の字入りの宝船の絵は、宮中で宿直にあたる者たちに下されたものだという。
原典より
また、萩原隨筆によると、後小松院が夢に寶船を御覧になったので、之を書かしめ、自ら獏の字を記し、かなへぎのの黄金の釜の煤を集めて版を摺つたといふことであるが、…—— 動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・1926年(大正15年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・1926年(大正15年))
『動物妖怪譚』は、日野巌が大正六年に筆を起こし、大正十一年の跋と大正十五年の再記を添えて著した伝説の動物の研究書である。鬼・天狗・河童・人魚・雪女・龍・雷獣・狐・狸・獏・鯰・猫など二十六の項目を立て、記紀や万葉集から近世の随筆までの記事を原文の引用ごと示して起源と変遷をたどり、動物学の知識で正体を考える。總論で起原・歴史的変遷・分類などを論じ、結論では迷信から科学へ近づくことを説いて閉じる。