達智門の上に立った妖気と羽蟻の大群
どんな伝承か
仁和二年八月、都では地震が続き、一日に二度、二日に三度、四日には五度も揺れた。その四日、達智門の上に、煙のようでいて煙ではない妖しい気が立ちのぼり、天まで届いた。これを見たある者は羽蟻の群れだろうと言った。はたして八日には、羽蟻の大群が大蔵と正蔵院から湧き出すように飛び立ち、船岡のあたりまで空を覆い尽くしたという。九日にもまた地震が起き、この月は天災と怪異が次々と重なった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の妖怪(早川純夫・早川純夫・妖怪史・1973年(昭和48年))
『日本の妖怪』は、早川純夫が一九七三年(昭和四十八年)に著した妖怪史の読み物である。『出雲風土記』『日本書紀』から『日本霊異記』『今昔物語』、江戸の『新著聞集』などの随筆までの古典に記された妖異を、かかわりのある実在の人物や事件とともに古代から近世へ時代順にたどる。全八章で、引用は意訳を交えて『』でくくり、仏教談や霊験談、地方の民話はおおむね除き、第七章には江戸の見聞録から選んだ二十話を並べる。