寺の本堂へ歩く足音と翌日のツゲ
どんな伝承か
府屋にある曹洞宗帯楽寺で、住職の子息が幼少の頃のこと。冬の夜、台所の火にあたっていると、玄関の近くの杭で草履の雪を落とす音が聞こえた。住職にお客さんですよと知らせたが、ただいいよと言ったまま腰をあげようとしない。おかしいなと思っていると、誰かが家に上がり、そのまま本堂の方へずんずん歩いてゆく足音が聞こえて、思わず身震いをした。すると翌日、同じ町内でもっとも奥地の部落である山熊田から、死を知らせるツゲが来たという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
霊魂の行方(最上孝敬・最上孝敬・葬送民俗・1984年(昭和59年))
『霊魂の行方』は、最上孝敬の葬送習俗に関する論説を集め、名著出版が昭和五十九年に刊行した論集である。死者の霊を家から送り出す霊送りやカラダビ、骨掛け、男女別墓制と半檀家、無縁仏、盆と施餓鬼、葬儀の水など、千葉・埼玉をはじめ各地で聞き取った習俗と既刊の報告をもとに論じる。「霊送りとその周辺」「葬送の諸問題」「葬祭の民俗」の三章に二十八篇を収め、巻末に初出一覧、大島建彦の解説、年譜、著作目録を付す。