開封を見抜いた勢田の橋の女
どんな伝承か
今昔物語に見える話として柳田が紹介するものである。京へ帰る途中の旅人が、美濃路のある所で女から一通の手紙を預かり、勢田の長橋まで届ければ受け取る者が出て来ると言われた。旅人は道中で封を開けてみたが、何のことやらさっぱりわからない。素知らぬ顔で封をし直して勢多の橋まで来ると、はたして目の覚めるような美しい女が現れ、預かった手紙はないかと尋ねた。とぼけて差し出すと、女はその場で開いて顔色を変え、途中で開けて見ただろう、お前は悪い人だと言った。とたんに天地が怪しく鳴り響き、旅人は生きるか死ぬかの境をさまよう目にあったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
妖怪談義(柳田國男選集 五巻)(柳田國男・柳田國男・妖怪学・1956年(昭和31年))
『妖怪談義(柳田國男選集 五巻)』は、柳田國男が妖怪についての論考を集め、昭和三十一年に自序を付して編んだ論集である。妖怪と幽霊の別を説く総論「妖怪談義」に始まり、川童・小豆洗い・ザシキワラシ・山姥・山男・大太法師・一つ目小僧・天狗などを、各地の言い伝えと方言の呼び名から考える。巻末に全国の妖怪の名を短い説明つきで集めた「妖怪名彙」を置き、大藤時彦の解説を付している。