犬鳴川に流した水天宮のお札
どんな伝承か
筑前植木の犬鳴川で十七、八の若者が河童に引かれたとき、水天宮のお札を川に流すと、お札は十四、五間先の遺体が沈んでいる場所まで流れて行ってぐるぐると回り、すぐに見つけることができた。この土地では、水天宮の祭りの時に受けたお札を小さな竹筒に入れて首に掛けておけば、水に入っても決して河童に引かれないと言い伝えている。河童よけのまじないには水に縁のある水天宮がもっとも効くとされ、どこの宮でも河童よけのお札を出している。水辺の童子を恐れる心と山童を忌む山人の心とは深くつながっていると著者は説いている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
河童・天狗・妖怪――民俗随筆(武田静澄・武田静澄・民俗随筆・1956年(昭和31年))
『河童・天狗・妖怪――民俗随筆』は、武田静澄が昭和三十一年に著した民俗随筆である。天狗と神かくし、河童、座敷わらし、山の神と山の妖怪、狐狸とつきもの、水辺や海の亡霊、死霊と御霊などをめぐる伝承を、『今昔物語』などの古典の説話と各地の民俗の事例から集めて語る。短い見出しを立てた小文を連ねる形をとり、神かくしにあう心理や幻覚、お化けの心理にも触れて、妖怪を信じる心のはたらきを考える。