大恩寺に返された化け灯篭
どんな伝承か
猪苗代の亀ヶ城の城主が、領内を見て回る途中で酸川野の村にさしかかった。白布山大恩寺の山門のわきに立つ石灯籠が、苔をまとって得も言われぬ趣を見せていたので、譲り受けて城へ運び、庭に据えた。ある晩、寝についた城主の前に、夢とも現ともつかぬかたちで、丈の短いぼろをまとい藁縄を帯にした老人が現れ、灯籠を元へ戻せと詰め寄る。城主が枕元の刀で切りつけると、老人はかき消すように失せた。翌朝、庭を掃く小者が灯籠に刃の傷を見つけて知らせ、城主は寺から持ち出したことを悔いて大恩寺へ返したという。家老に下げ渡され屋敷に残ったとの説もあるが、今はどこにも見当たらない。
原典より
昔、猪苗代亀ヶ城何代目かの城主が領内巡視の途次、酸川野村を通ったところ、白布山大恩寺の山門の傍らにある石灯篭が、苔むして風情何ともいわれぬ雅趣を帯びていたので、請うて城に持って帰り庭に据え置いた。—— 猪苗代町史 第2集(民俗編)――昔話と伝説(猪苗代町(編)・猪苗代町史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
猪苗代町史 第2集(民俗編)――昔話と伝説(猪苗代町(編)・猪苗代町史)
『猪苗代町史 第2集(民俗編)――昔話と伝説』は、猪苗代町の町史民俗編のうち、第十一章「昔話と伝説」を収めたものである。町内の話者から聞いた方言まじりの昔話と、楊枝峠の力松、皿沼物語、木地小屋村の大蛇、大恩寺の化け灯篭、首なし地蔵、吾磐椅の鬼婆、磐梯明神など、町内の地名や寺社にまつわる伝説を載せる。昔話は動物昔話と本格昔話に分け、伝説の末尾に『新編会津風土記』『耶麻郡誌』などに載る伝説の題を挙げた伝説追補を付す。