上日野村の尾先狐封じと吉田家の通達
どんな伝承か
安政元年の寅九月付で、京の吉田家の上州御用役である鈴鹿内膳が、上州多胡郡上日野村の名主と村役人に宛てて出した書状が伝わっている。村のある家に尾先狐の障りがあるといわれ、近くの村々で病人が出ると、その家から来たなどと口走る者がいた。そこで吉田家で封じの祈禱を施したので、この先その家族に障りは決してない。親族の田畑や山林、家財の売り買いも、付き合いや縁組も心配なく行ってよく、なお悪評を言いふらす者がいれば村役人が付き添って上京せよ、という趣旨である。今井善一郎の報告による。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の憑きもの――俗信は今も生きている(石塚尊俊・1959年(昭和34年))
『日本の憑きもの――俗信は今も生きている』は、石塚尊俊が昭和三十四年に著した研究書である。狐・犬神・蛇などの動物霊が人に憑くという俗信と、それを操るとされる家筋について、全国の伝承と近世以来の文書を集めて論じる。出雲・隠岐・豊後・土佐では筋の家の割合や縁組の偏りを調べ、憑きもの落としの行法や家の神とのつながりまでを七章で追っている。