狐持ちの家だから仕方ないと諦めた盗難
どんな伝承か
『夕刊山陰』に「出雲より」として載った記事に、出雲市高浜里方町の農業法田静子(二十二歳、仮名)が、前年の暮ごろから二月初めまでに、近所の金山キンさん方ほか七戸から毛糸や餅、現金などの空巣ねらいを働き、十三日に市署員に捕らえられたとある。近所の者も狐持ちの家だから仕方がないと、ほとんど盗難をあきらめて届け出なかった。本人も嫁入り前に迷信から来る白い視線が禍いし、半ばやけになって盗み回っていたらしいという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の憑きもの――俗信は今も生きている(石塚尊俊・1959年(昭和34年))
『日本の憑きもの――俗信は今も生きている』は、石塚尊俊が昭和三十四年に著した研究書である。狐・犬神・蛇などの動物霊が人に憑くという俗信と、それを操るとされる家筋について、全国の伝承と近世以来の文書を集めて論じる。出雲・隠岐・豊後・土佐では筋の家の割合や縁組の偏りを調べ、憑きもの落としの行法や家の神とのつながりまでを七章で追っている。