炎を吐いて安珍を追う清姫
どんな伝承か
恋い焦がれる、恋の炎、情炎といった言葉がある。道成寺の物語で、清姫の恋の炎は激しく燃えさかり、清姫は口から炎を吐きながら安珍を追いかけ、蛇の姿となって川を渡る。安珍が釣鐘の中に隠れると、蛇身の姫がその鐘に巻きつき、その熱で鐘は溶けて、中の安珍は焼かれて灰になってしまう。蛇の舌のちらつきが炎に似ていることも背景にあるらしい。恨みや怒り、嫉妬で心が騒ぐと体がほてるが、それは単なるたとえではなく、体の中で炎が燃える思いだったのだろうという。
原典より
安珍のかくれた釣鐘を蛇身の姫が巻くと、その熱で鐘は溶け、中の安珍は焼けて灰になる。—— 霊魂の博物誌――原始生命観の体系(碓井益雄・碓井益雄・民俗学・1982年(昭和57年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
霊魂の博物誌――原始生命観の体系(碓井益雄・碓井益雄・民俗学・1982年(昭和57年))
『霊魂の博物誌――原始生命観の体系』は、動物発生学を専攻した碓井益雄が著し、昭和五十七年に河出書房新社から刊行した書である。原始・古代の人々が霊魂をどう考えたかを、日本と諸外国の神話・民俗・古典・言葉の資料から説き、気息や人魂、風や雲、鳥や昆虫、幽霊や影として現れる霊魂の姿と、内臓・心・感覚器官に宿るとされた霊の座を論じ、屎尿や屁、名前と言霊にも章や節を割く。序章と全九章からなり、各章末に参照文献の注を付す。