墨を塗った公家の娘という清姫像
どんな伝承か
西牟婁郡中辺路町野中で語られた話。清姫は京都の公家の娘で、墨を顔に塗り風呂焚きなどもして、お嬢さんに見えないようにしていたという。安珍は清姫が健やかでいるかと、毎日、熊野参りにかこつけて真砂の庄屋のもとへ見届けに来ていたらしい。それが敵に見つかり、連れて逃げる途中、日高川まで来た時に二人とも殺された。道成寺は格式のある寺なのに三十三番に入っていないので、どうしようかと頭を悩ませ、安珍清姫の話を伝説にして参詣に来るようこしらえたのだという。また二人が釣鐘の中に隠れていた時、安珍のわらじの端が外に出ていたことから、わらじの紐はこぶに結ばず、ねじって挟むようになったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第9巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第9巻』は、日本伝説大系編集委員会が編んだ伝説資料集の一巻である。三重・奈良・和歌山・大阪の各地に伝わる伝説を、三輪山・安珍清姫・弘法清水・油掛け地蔵など百余りの話型ごとに集める。各話型は例話を冒頭に据えて『日本伝説名彙』などとの対応を示し、〔類話〕に伝承地と出典つきの梗概を並べ、〔文献〕に近世以前の史料の原文を添えて補う構成をとる。