松根油のため天狗松を伐った男の死
どんな伝承か
平川の集落の背後にそびえる山をオカゴ山という。その尾根、隣村との境に大きな松があり、村人は天狗松と呼んでいた。幹も枝も肘を曲げたように折れ曲がっており、登れば天狗に投げ落とされると恐れられていた。太平洋戦争の末期、飛行機の代用燃料となる松根油のため松の根の供出が割り当てられ、集落では隣保班ごとに山へ掘りに入った。お国のためなら天狗も怒るまいと、一人の男が天狗松に登って太い枯枝を伐り落とした。ところがその男はほどなく病を得て死んでしまう。妻は、進んで伐らなくてもよかったのにと嘆いたという。小学生の子を抱えた一家の主で、語り手の親族であった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 9 (木霊・蛇)(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 9 (木霊・蛇)』は、松谷みよ子が全国の回答者から寄せられた報告と各地の民話集をもとに編んだ『現代民話考』の一巻である。明治から平成にかけて語られた、伐ろうとすると祟る木・泣く木・血を流す木などの木霊の話と、大蛇やつちのこ、蛇婿・蛇女房、主や守り神としての蛇、蛇と福運などの話を、話者や回答者の名とともに収める。第一章「木霊」と第二章「蛇」を主題ごとの節に分け、各話例の後に「分布」として類話の地名と出典を並べる。