肥後の猫岳へ修行に行く飼い猫
どんな伝承か
筑前の鞍手郡あたりでは、飼い猫は大きくなると必ず一度は姿を消すといわれた。二度三度と消える猫もいて、三十日から六、七十日も帰らない。五十里も離れた肥後の猫岳、すなわち根子岳へ修行に行くのだという。そこには多くの猫が集まって行をし、戻ってきた猫はもう普通の猫ではない。行に行かない猫はほとんどおらず、帰った猫はげっそり痩せ、どれも耳が裂けている。そのため耳の裂けた猫のそばには幼子を決して寝かせない。また猫の尾が体の長さほどに伸びると化けるといって恐れられた。
原典より
筑前の國の鞍手郡あたりでは、飼猫が大きくなるときつと一度は姿を隠す。—— 民俗怪異篇(磯清・磯清・民俗怪異) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
民俗怪異篇(磯清・磯清・民俗怪異)
『民俗怪異篇』は、磯清が著した民間の怪異をめぐる随筆集である。馬を襲う魔物ギバとその禁厭、阿波の首切れ馬「夜行さん」、姫路城の刑部姫や猪苗代城の亀姫などの城の怪、化け猫、灯火による占い、秩父三峰の狼の信仰と狼の怪、怪談を題材とする落語を取りあげ、各地の言い伝えや古い記録を引きながら語る。序に続いて「馬の災と馬の怪」「城の主」「猫」「灯の占」「狼の噂」「落語に存在する怪談」の六篇を置き、それぞれを小見出しの短い話に分ける。