梁から落ちて南無三宝と叫んだ猫
どんな伝承か
芝の増上寺の脇寺である徳水院の話として、ごく短い一条が伝わる。猫が梁の上で鼠を追い回しているうちに足を滑らせ、そのまま下へ落ちた。落ちた拍子に、南無三宝、と声が出たという。人の声で、しかも大きな声であったと伝えられている。前に挙げた清養院の猫が意図をもって言葉を交わしたのとは違い、こちらは思わず口をついて出た点に突発的なおかしみがある。猫が人語を発したという話は、これ以外にもいくつも残されている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
民俗怪異篇(磯清・磯清・民俗怪異)
『民俗怪異篇』は、磯清が著した民間の怪異をめぐる随筆集である。馬を襲う魔物ギバとその禁厭、阿波の首切れ馬「夜行さん」、姫路城の刑部姫や猪苗代城の亀姫などの城の怪、化け猫、灯火による占い、秩父三峰の狼の信仰と狼の怪、怪談を題材とする落語を取りあげ、各地の言い伝えや古い記録を引きながら語る。序に続いて「馬の災と馬の怪」「城の主」「猫」「灯の占」「狼の噂」「落語に存在する怪談」の六篇を置き、それぞれを小見出しの短い話に分ける。