煙草の火で正体が知れた狸の法座
どんな伝承か
浄楽寺山の向かい側の広い所で、以前この寺にいた偉い和尚の法話がある、もう小屋掛けができている、という噂がどこからともなく村中に広まった。その夜、月明かりのもと行ってみると立派な広い小屋が建ち、正面は厳かに飾られていて、人々は思わず手を合わせた。和尚が現れて勤めのあと法話が始まると、昼の疲れで居眠りする者もいた。後ろの老人が眠気覚ましに煙管を一服し、火のついた吸い殻を手のひらから落とした途端、敷物が前へ引かれて皆が後ろへ倒れた。気がつくと小屋は消えて赤土の山肌に座っており、大狸が子狸を連れて山へ逃げていくのが見えた。以来、村の子は狸の睾丸は千畳敷と囃したという。
原典より
その夜、月明りに照されたうわさの所に行くと立派な広い小屋が建っています。—— 篠栗町誌 民俗編――伝説・怪異(篠栗町(編)・篠栗町誌) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
篠栗町誌 民俗編――伝説・怪異(篠栗町(編)・篠栗町誌)
『篠栗町誌 民俗編――伝説・怪異』は、筑前の篠栗町の町誌民俗編から伝説の章を収めた部分である。鉾立山の玉依姫、若杉山の岩にまつわる弘法大師や鬼の伝承、薬師・地蔵・観音の霊験、平家岩や古井戸の言い伝えを番号つきの項で並べ、『筑前国続風土記』などの地誌や説明板の文を引く。後半では狐に化かされた話や狐憑き、狸の法座、巷の笑い話、若杉山の白蛇と杵蛇、河童の話を、古老の語りを交えて記す。