土の中で呻いていた火祭り薬師
どんな伝承か
乙犬区字中園八十三番地に、間口一間、奥行一間半のお堂があり、高さ三尺三寸の滑石製の薬師如来が祭られている。毎年十一月十二日の夜、中園組合の人々が堂の前に薪を燃し、その周囲に筵を敷いて座り、手料理と酒で深更まで祭りをする。昔、中園のお婆さんが須恵村へ行く切通し越えを歩いていると、どこからか「ううん、ううん」とうめき声が聞こえた。声をたよりに探すと、土の中に埋もれて呻いている薬師を見つけた。婆さんの知らせで組合の人々が鍬を持って駆けつけ、大きな石薬師を掘り上げて現在地へ運び、寒かろうと石が暖まるまで薪を焚いた。それが火祭りの起こりだという。
原典より
「やれ、やれ、誰かこの藪の中に倒れているようだ、助けずばなるまい」と、独りごとを言いながら、声を頼りに探したところ、土の中に埋って呻いていられるお薬師様を見付けました。—— 篠栗町誌 民俗編――伝説・怪異(篠栗町(編)・篠栗町誌) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
篠栗町誌 民俗編――伝説・怪異(篠栗町(編)・篠栗町誌)
『篠栗町誌 民俗編――伝説・怪異』は、筑前の篠栗町の町誌民俗編から伝説の章を収めた部分である。鉾立山の玉依姫、若杉山の岩にまつわる弘法大師や鬼の伝承、薬師・地蔵・観音の霊験、平家岩や古井戸の言い伝えを番号つきの項で並べ、『筑前国続風土記』などの地誌や説明板の文を引く。後半では狐に化かされた話や狐憑き、狸の法座、巷の笑い話、若杉山の白蛇と杵蛇、河童の話を、古老の語りを交えて記す。