笠を貸した地蔵と田植の音
どんな伝承か
昔、若柳の前谷地に年老いた夫婦が住んでいた。息子夫婦に先立たれ、静かに暮らしていたある初夏、明日から田植という日に、じいさんは町の帰りに俄雨に遭った。雨に打たれる地蔵を見て、ばあさんのために買った笠をかぶせて帰る。その夜更け、近くで大勢が田植をしているような物音がした。朝、田を見に行くと植えるはずの田はすっかり植え終わっており、田の中にサセトリ姿の男の子が倒れていた。夫婦は手厚く葬り、その場に子を象った地蔵を建てて祀った。秋にはその田に糯稲が実り、以後どんな凶作でも実る地蔵田と呼ばれていると伝わる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
胆沢町史 11(民俗編4)――口承・伝説(胆沢町(編)・胆沢町史)
『胆沢町史 11(民俗編4)――口承・伝説』は、胆沢町の町史民俗編の一冊のうち、第四章「口承・伝説」を収めたものである。第一節は松浦佐用姫と高山掃部長者の伝説を扱い、胆沢・水沢周辺の伝説地を列挙したうえで、町内に伝わる佐夜姫の本地物の写本や『南部叢書』所載の「奥州胆沢高山実伝」を翻刻する。第二節「いさわの昔話」は大蛇・狐・むじな・飢饉・戦後の怪異などの話を番号順に並べ、第三節「いろいろな昔話」へと続く。