長者夫婦の前世の罪
どんな伝承か
長谷寺に七七日籠った松浦長者夫婦の枕元に、老僧の姿で現れた観世音は、子を授けられない訳として夫婦の前世の罪を語った。長者の前世は信濃国の狩人で、暮らしのためでなく、鳥獣が苦しみ死ぬさまを楽しむために殺し、森に火を放って鳥を焼いた。あるとき十二羽の雛を抱く山鳥の巣に火をかけると、雌は雛をかばったまま焼け死に、戻った雄も炎に飛び込んだが、狩人はそれを見て大笑いしたという。妻の前世は近江の瀬田のほとりに住む二十丈余りの大蛇で、毎日鳥獣の子を捕っては餌にしていた。この罪業ゆえ夫婦に子宝はなく、恨むなと告げて観世音は消えたという。
原典より
さて妻の方の前世では、近江の瀬田のほとりに住む二十丈余りの大蛇でありました。—— 胆沢町史 11(民俗編4)――口承・伝説(胆沢町(編)・胆沢町史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
胆沢町史 11(民俗編4)――口承・伝説(胆沢町(編)・胆沢町史)
『胆沢町史 11(民俗編4)――口承・伝説』は、胆沢町の町史民俗編の一冊のうち、第四章「口承・伝説」を収めたものである。第一節は松浦佐用姫と高山掃部長者の伝説を扱い、胆沢・水沢周辺の伝説地を列挙したうえで、町内に伝わる佐夜姫の本地物の写本や『南部叢書』所載の「奥州胆沢高山実伝」を翻刻する。第二節「いさわの昔話」は大蛇・狐・むじな・飢饉・戦後の怪異などの話を番号順に並べ、第三節「いろいろな昔話」へと続く。