あざみ平で相撲を取った妖女
どんな伝承か
昔、門沢村若草内の与惣兵衛の家に勘三という家来がいた。ある朝、深山の「あざみ平」で二十歳あまりの妙麗な女に出会い、女はおさ松と名乗って夫婦になりたいという。仲人はいらぬ、相撲の勝負で縁を定めようと言われ、十日続けて取ったが勝負はつかなかった。女は宝物を与えて他言を禁じ、森の岩穴に住む穴まみの退治を頼んだ。だが同僚の与作から一部始終が漏れて代官所の吟味となり、開かれた包みには沢蟹の甲二枚と瑪瑙が二つあった。勘三はほどなく急死し、初七日に美女が下女を連れて墓参りする姿が見られ、村人はおさ松べらん女に違いないと噂した。
原典より
昔、門沢村若草内に与惣兵衛という人が居り、その家来に勘三という者がいた。—— 船引町史 民俗編――昔話と伝説(船引町(編)・船引町史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
船引町史 民俗編――昔話と伝説(船引町(編)・船引町史)
『船引町史 民俗編――昔話と伝説』は、船引町が編んだ町史民俗編のうち、第十一章「昔話と伝説」を収めたものである。昭和五十三年春から町内を回って集めた昔話を話者の名を添えて土地の言葉のまま載せ、坂上田村麻呂や安倍貞任にまつわる地名・社寺の由来など町内の伝説を併せて記す。第一節では語り収めの句、葉煙草ののし作業を語りの座とした伝承の環境、語り手の系譜を論じ、第二節では伝説を自然・歴史・宗教の三つに分けて紹介する。