天狗を使った庄屋・喜多の源内
どんな伝承か
祖谷は谷あいに三軒五軒と家が散らばる山深い村で、三十を越える大字小字を抱え、いまだ人の入らぬ山や、入れば戻れぬと恐れられる谷があった。中津の入らず山へ行ったきり戻らなかった由の木左衛門の五兄弟は、中津山の神としてまつられている。村には法力の持ち主もいた。喜多の庄屋源内は天狗を使うと恐れられ、手を三度打つだけで徳島からうどんや蜜柑を取り寄せてみせたという。一宇の南八蔵と力くらべをした折には、薪がないと言われて自分の脛を削って炉にくべ、翌朝八蔵の家の柱が半分削れていたと語り伝える。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本人物語5――秘められた世界(関敬吾(編)・日本人物語)
『日本人物語5――秘められた世界』は、日本人の暮らしの奥にある秘められた信仰や伝承を扱った叢書『日本人物語』の一冊である。境の神や通過儀礼を論じる序論に続き、入らず山や隠れ里、竜宮、平家谷、埋蔵金、生まれ代わり、あの世を見た話、魔法使い、生霊、秘密結社、狐憑きなどを、伝承と昭和三十年代までの新聞記事・見聞を織りまぜて述べる。序論「生活文化の秘密性――はじめに」の後、「奇蹟」「不気味な神々」などの区分の下に短い節を並べる。